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こんにちは、ボクの名前は小松と言います。
まだまだ若輩者なんですが、ホテルグルメで料理長をさせて貰っています。
ボクが生まれたのは小さな島国で、周りを海で囲まれているから海の幸、山岳地帯も多いため、山の幸、そして、豊富な食物に誘われ動物も多く生息している、食に溢れた島です。
美味しいものが溢れる島で育ち、ボクは必然的に美味しい食材をもっと美味しくすると言う行為――つまり料理に興味が行くのは必然だったんだと思います。
島を出て、バイトをしながら料理学校に通い、ホテルグルメに料理人として就職することが出来ただけで、ボクにとってはこれでもか!ってぐらい幸運でした。
最初の頃は、もちろん皿洗いで、賄いを作らせて貰える時だけが、食材に触れられる時間でした。
それが当時の料理長や副料理長に気に入られ、いきなりスープを担当させて貰え、そのスープがお客様に好評だったらしく、どんどんコースメニューの一部を任されるようになりました。
一年前、ついにフルコースを作ってみないかと言われたときは、さすがに恐縮してしまいましたが、せっかく与えられたチャンス、ボクの料理が四つ星を担えるかどうか、精一杯頑張らせて頂きました!
でも、驚いたのはボクのフルコースを召し上がったのがG7の方だったんです!
しかも、ボクのフルコースをお気に召して頂けたそうで、ホテルグルメが五つ星に昇格したんです!
ボクもう…これ以上の幸運は起こらないだろうなと思ったのですが、驚いたのは料理長と副料理長が揃って引退なさるって……それで、ボクを料理長にって推薦してくださったんです!!
さすがに、二十四歳で料理長なんて…って思ったんです。
必死にそれだけは許してください、辞めないで下さいってお願いしたんですけど、料理長はお年でしたし、副料理長は自分のお店を開くのが夢だったとかで……
職場のみんなも、ボクを推してくれて……
ボクなんかでいいのなら、みんながボクを認めて…ボクより長く勤めている方もいるのに……
みんな、みんなボクを料理長にって……
それなら、力の限り全身全霊をかけてホテルグルメに尽くそう、ホテルグルメにいらっしゃったお客様が笑顔になれるように粉骨砕身頑張ろうって思ったんです!!
それは、ボクが料理長に就任してからすぐの事で……
「すっげー筋肉だよなぁ……」
「これは絶対赤肉だよな」
「いや、白肉じゃね?」
「お前ら…人間の筋肉見て肉の種類想像してんじゃないよ」
「え、だってほら、見てくださいよ!この筋肉!」
「あぁー?あー……」
ランチのピークが過ぎて、ボクを含め数人の料理人が休憩に入った。
そのうち、一人がグルメ雑誌取り出して、とあるページを見ながら「スジ…?いや、うう~ん……」
なんて言うから、食材の話題かと思って、みんな集まりだした。
でも、人間って……
「脂肪が少なそうだからなぁ…何にしても料理するなら、煮込みだな」
「ちょっとー、調理法想像するほうがえげつないですよー」
「そっかね?」
「そうですよー」
なんだかみんな料理馬鹿なんだなぁと、彼らの様子を見てクスリと笑ってしまった。
「ね、料理長は!料理長はどう思います!?」
急に雑誌を差し出され、ボクは面食らいながらも目の前に開かれたページを見る。
そこには、オレンジのタンクトップを着て、後ろには大きな鳥類。そして、その食材のモモ肉を豪快に食いちぎっている男の人が映っていた。
「うわー、美味しそうに食べる人だねー」
焼いただけの肉、でも新鮮だからこそ素材の味そのものを味わえる、ある意味一番贅沢な食べ方で、そんな肉の塊をこれだけ美味しそうに食べる人…もしも、ボクの料理を食べてもらう機会があったら、この人はこの写真見たいに、ボクの料理を食べてくれるかな?
記事を読むと、美食屋四天王のトリコって書いてあった。
名前だけは知っていたけど、そっか、この人がトリコさんなんだ。
「こんなに美味しそうに食べる人に、ボクの料理でもっと笑顔になって貰えるといいなぁ」
食材本来の味を知っている人に、美味いって言って貰えたら、幸せだろうなぁって思っての一言だったんだけど……
「料理長はそっちかー」
「そりゃそうだ。だからこそ、料理長なんだよ」
「反省だな」
「へっ?へっ?何が?」
訳が分からないまま、みんなに暖かい目で見られて、何がそっちなのか聞きたかったんだけど、休憩時間は終わってしまった。
その後、きっとあの美味しそうに食べる姿が気に入ったんだと思う。
テレビや雑誌にトリコさんの名前があると、どうしても気になるようになっていた。
気になるが、憧れに変わるのはあっという間で……
そして、あの日……ボクはついに憧れの人に会うことが出来たんだ。
end