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「あちゃぁ。」
アニスが溜息を洩らす。
「どうかしましたかー、アニース?」
「それがぁ、イオン様がいないんですぅ。なんとなぁくこうなる予感はあったんですけどぉ。」
「その辺りは鮮明ではないんですか、アニスは。」
アニスとは既に、互いが何故か未来に起こりうる記憶を持っている、という風に話をしてある。
「ん~、よく覚えてるのはアクゼリュスのとことかなんですよぉ。」
またあのくっそむかつく頃のルークと旅しなきゃいけないとかマジ勘弁なんですけど……
との呟きに、アニスがスパイだってわかった時は悲しかったですねぇ、と大げさに返せば、むぐぐぅ、と呻く。
「ま、その話は置いておいて。イオン様はチーグルの森ですよ。今頃ルーク達と共に行動しているでしょう。」
「あー!そうだった!どうするんですか大佐ぁ?タルタロスごと行っちゃったほうが早いですけどぉ。」
「いえ、記憶通りに行きましょう。森に入ったばかりだとすれば、タルタロスの走行音が聞こえかねません。」
(めんどくさぁ……)
「ん~?何か言いましたか、アニース?」
「え!?何にも言ってないですよ~たぁいさ☆」
互いにわざとらしく微笑みあい、チーグルの森へと向かった。

二日立て続けに夢を見た。
今日のは結構鮮明で、それでも断片的だったけどイオンって奴がダアト式譜術?
とかいうの使ったせいで体調が悪くなるとか?
元々チーグルって奴らとっ捕まえてやろうと思ってたし、イオンって奴と一緒に森の中行く羽目になるらしいし。
やっぱり最後に一瞬、あのジェイドとかいうヤローが見えたんだけど……
とりあえずイオンって奴に倒れられてもめんどくせーから早くに森に向かった。
なんかヘンな青いうぜぇのとかのせいでライガクイーンとかいうのと戦う羽目になるんだよなぁ……
丁度森ではイオンがモンスターに囲まれたところで、俺は急いで駆け寄った。
「ティア、そいつ頼む!」
「え、えぇ!」
一人で三匹は流石に辛かったけど、何とか倒すことが出来た。
ティアに回復してもらいながら、イオンと話をする。
「あぶねぇーだろ!なんだって一人でこんなとこにいるんだよ!」
「ルーク!そんな言い方酷いわ!」
「いえ、僕が悪いんです。どうしても今回の食料泥棒の件が気になって……。
助けて頂いてありがとうございます。」
「まぁ、無事だったからいいけどよ……。」
その後、イオンがヴァン師匠が探してた導師だって聞いて、しかもティアがヴァンの妹だって聞いて。
頭ん中ぐっちゃぐちゃになったけど、今はチーグルが先だ。
「とにかく、さっさと行くぞ!」
「導師はお帰りになられた方が……。」
「どーせ、また一人で来ちまうだろ、だったら一緒に行動したほうがいいじゃねーか。」
「えぇ、すいませんが、教団の聖獣であるチーグルがこんなことをするなんて、何か理由があると思うんです。
だから僕は……。」
それでもティアは不安そうな顔でイオンを見ている。
「また一人でのこのこ森に入って襲われたら大変じゃねーか。
一緒に行動したほうが守れるし、そのほうが楽だろ。」
「……ありがとうございます!優しいんですね、ルーク殿!」
「ば…ばっかじゃねーの!?いいからとっとと行くぞ!それと、俺のことは呼び捨てでいいからな!」
「はい!ルーク!」


おやおや、苦戦しているようですねぇ。
「まずいわ、攻撃が効いていない……。」
「おい!どーすんだよ!」
さて、本当にどうするか……
ライガ・クイーンを倒せばルークが苦しむ。後々面倒ごとも出てきますしねぇ。
けれど苦しみを知らなければ、ルークはルークに至らない。
「大佐ぁ見てていいんですか?」
「しかたありませんねぇ。」
ルークに向けてライガ・クイーンが放とうとした雷撃を飽和させる。
「どうにかしてあげましょう。二人とも下がっていなさい。」
興奮状態のライガ・クイーンはそれでも私の実力を察知して距離を置いてはいるが、
戦意自体は喪失していないらしい。
さて、気絶させてどこかの森にでも捨て置くか、あぁ、洟垂れにでも後始末させますか。
「すいませんね。」
その言葉と共に最小限に威力を抑えた術を放つ。
刹那、ルークの殺すな!という叫びが聞こえてくる。
直撃を受けたライガ・クイーンはそれでも卵を護るようにして倒れ付した。
「ま、これくらいでいいでしょう。」
振り向けばあっけに取られた様子の二人。
「強い…ただの譜術士じゃないわね……」
ティアは私の強さに警戒心を抱いたのだろう。隣のルークを見れば、複雑そうな顔をしている。
確かに、夢の通りに行動していたはずが、違う結末になったとなれば、悩みもするだろう。
しかも自分の身体とまるで関係ない所での夢との相違。
「トドメは…刺さないんですか、カーティス大佐。」
ティアから向けられた言葉にやれやれと首を振る。
「いいじゃねーか!死なずにすんだならそれで!」
「甘いわねルーク。生まれたライガが人肉を好むことは言ったはずよ。生かせばエンゲーブが危ないわ。」
「冷血女!」
おやおや、結果は変わっても喧嘩はかわりませんねぇ。
「まぁ、私としてはどちらでも構いませんが?」
「構うっつーの!」
そうこうしているうちに、ライガ・クイーンが呻き声を上げ立ち上がろうとする。
ティアが杖を向ける。
「止めろって!こいつらだって自分が住んでた場所追われただけなんだろ!?」
ティアの目の前に立ちはだかり両手を広げるルーク。
「ルーク!危険だから離れて!」
「嫌だ!殺さないって言わないと離れねぇぞ!」
「あなた死にたいの!?」
二人からすれば緊張感にあふれているのだろうけれど、こちらから言えば間抜けな図柄となっている。
何せ、ライガ・クイーンがルークに擦り寄り後頭部を舐めているのだから。
「ちょ、やめろって、なんだよいきなり!」
「ライガ・クイーンさん感謝してるですの!」
ミュウがピョンピョンと跳びながら説明を入れる。
「わあーったから、やめろって!いてててて、舌ザリザっ……いてて。おい、やめろって言え!」
ルークになつくライガ・クイーンの姿に構えた杖をおろしたティアが溜息を吐く。
「いやぁ、人と魔物の友好。美しいですねぇ。」
「美しくぬぇー!!」

「こちらで保護してどこか人里離れた森に放すことも出来ますよ。」
場が落ち着いた頃、そう提案し、皆の同意を得て森を出ることになった。
まぁ、前回同様アニスにタルタロスを呼びに行かせ、ミュウが付いてくることが決まり、
ライガ・クイーンと卵も連れて森の出口まで戻る。
とたんにライガ・クイーンが警戒するように声を上げる。
「なんだなんだ?」
駆け寄ってきたアニスと兵に、きょとんとするばかりで警戒心のかけらも見せないルーク。
お馬鹿さんで可愛いですねぇ。
「そこの二人を捕らえなさい!正体不明の第七音素を放出していたのは、彼らです。」
ライガ・クイーンの喉下に槍の刃を押し当てる。
「ジェイド!二人に乱暴なことは……!」
「ご安心ください。何も殺そうというわけではありませんから。……二人が暴れなければ。」


これから貴方に見せるのは惨い現実。

たとえ傲慢と言われようとも、私は貴方を苦しめ、悲しませる。

そうさせないことも出来るのに。



貴方を至らせる為に。私は貴方を苦しめる。


まあ、タイトルと〆文が矛盾してるとか。
なんで、ライガ・クイーンついてきちゃったんだろう?
話が私の頭を離れてどんどん勝手に進んでいくんですが。

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私の心はこんなにも

ティア…馭車…ペンダント…形見……?
タルタロス……エンゲーブ……
『…じぇ……?』

「起きて!」
ボーっとする頭を振って辺りを見渡す。
ここは……さっき夢で見た……
「私はティア、どうやら貴方と私の間で擬似超振動が起きたようね。」
しばらくティアって奴が喋ってるのを聞いてた。
なんでヴァン師匠を襲ったのかとか、気になることがいっぱいあったんだけど、最後に一瞬、
本当に一瞬出てきた赤い眼の男のことが気になって。
いつも夢の終りに見るあの男のことが。
その瞬間俺の声なのに俺じゃない奴の声が聞こえるんだ。
悲しそうに「俺を見つけて」って言う声が。
「ごめんなさい、責任はと……」
「あー!!!」
「へ!?何!?」
すっかり忘れてた!薬……あぁぁぁぁ~…………
「どうかしたの?」
言えるかっつの!薬がないと男じゃなくなる、なんてなさけねーこと誰が言うもんか。
「なんでもねぇ。とにかくはやくここ抜けようぜ。」
「えぇ……。」

途中で実践のレクチャーを受けながら何とか渓谷を抜ける。
(あー、居やがった。馭車。)
ティアがペンダントを渡そうとする。
(なんか、あのペンダントのせいで苦労するっぽかったなぁ。)
「これでいいだろ。」
ブレスレットを外して馭車に渡す。
「ルーク、ダメよ。ただでさえ私のせいで……」
「あー!いいんだよ!なんか遠い血縁とかいう奴がくれた奴だし、別にいらねぇし。」
金で出来たブレスレットには、丁寧な炎の模様彫りと小さなダイアがちりばめられている。
「こ、これは……。」
見るからに、超がつく高級なブレスレットを渡され、男は息を呑んだ。
売れば一生を遊んで暮らせるだろう。
急いで辻馬車を掃除しにいった馭車を見送り、ルークはタタル渓谷を一望する。
いまさらながらに外にいるんだ、という実感を噛み締めていると、ティアが小さく「ありがとう……」と呟いた。

タルタロスに追われていた漆黒の翼により橋を壊され、それにより今いる場所がマルクト領と聞かされ、
引き返すことも叶わず結局付いたのはエンゲーブという村だった。
今までと違って途切れ途切れに、譜業写真を見るかのような夢だったせいだろう。
(こうなるって見れてりゃ、こんなめんどうなことにはならなかったのに、なんなんだよっ!)
夢に八つ当たりしてもどうしようもないことはわかっていても、納得が行くはずもない。
しかも、泥棒と間違われ、突き出されそうになっているのだ。


あぁ、ルークが来ますね。
待ちに待った、再開の時。
いや、ルークからすれば初めての出会いになるわけですが。
柄にも無く強く、早く鼓動する胸、自然と緩む頬。
「おや、大佐。どうかしたんですか?」
「いいえ、何でもありません。」
ドアが開き、ルークが村民に蹴り飛ばされる。
「おっと、大丈夫ですか?」
倒れる前に抱き止る。
「あ…あぁ。」
(こいつ……夢で…)
視線が交じり合えば、つと目線をそらされて。
そんなつれない態度すら、愛おしく感じる。
「いけませんねぇ、何があったかは知りませんが。」
眼を細めて睨み上げれば村民は竦みあがりつつも、興奮した様子でルークを泥棒と言い張る。
やっぱり林檎を盗み食いしてしまったんですねぇ。
まぁ、そう行動してくださらないとこちらが困りますが。
仕舞いには、漆黒の翼だ、食料泥棒だと言い立てる村民をローズ夫人が諌める。
「私はマルクト帝国軍第三師団所属ジェイド・カーティス大佐です。あなたは?」
「ルーク。ルーク・フォ……」
「ルーク!」
記憶のままにティアに止められるルーク。ここまでは順調ですねぇ。
ルークの身体構造の改造影響が出ていないのが怖いくらいに。
イオン様が現れ、食料泥棒の誤解も解け、家を去るルークが振り返る。
記憶にあるのは、イオン様を見つめるルーク。
だがしかし、何故かルークは私を見つめ、眉を顰めた。
おかしいですね……まだルークには私に関する記憶は見せていないはず。
ある程度の改編のせいか…それともなにか……
不安とも取れない、感情に見舞われながらも、ローズ夫人との会話を終えタルタロスへと戻る。
明日は、ルークとの旅の始まり。


傲慢故に

貴方に私は辛い思いをさせる

私はまた貴方を傷つける

だから、それまでは貴方を護ろう。

その後は、貴方を護ろう。

時がくるまで、貴方に辛い思いはさせない 傷つけさせはしない


たとえ傲慢と言われようとも、貴方に悲しみを与えはしない。


本当はティアとナタリアも(PTメンバー全員)逆行させようかと思ったんですが、
ストーリーが屑つまらなくなる上にマッハで終わる悪寒がしたので、却下。
ストーリーの細かな台詞把握の為に(活かせてない)プレイしながら書いているんですが、
調子こいてタオラーにしたんですけどね、ケリーに首根っこ掴まれてプラプラするシーン……
痛くねぇかそれΣ(゚Д゚;三;゚д゚)!?

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今度こそ、貴方と


今日、全てがはじまる。
ルーク、貴方との再会を楽しみにしていますよ。


「お、なんだ。そんなに落ち込んでないんだな。」
ヴァンが導師捜索に出るという話を聞いた直後の割には、落ち込んだ様子じゃない。
「んー、なんかなぁ。ニ、三日前に夢でさ……。」
「あー、例の予知夢か?」
何年前からか、ルークは数日後に起こることを夢で見るようになっていた。
それは俺みたいな、なんとなく心が、覚えてる。というのじゃなくて。
その日に起こることが完璧に掌握出来るらしい。
夢と違う行動をあえて起こしたこともあったらしいが、今では「めんどくせー」らしく、夢のまま行動することにしているらしい。
ただ、何もかもその通りにすれば夢通りに展開するわけでもないらしい。
あのルークは何もしなくても完全に男だったからなぁ。
「んで、なんか用か?」
「ん、あぁ、ほら薬。今日の分。」
嫌そうな顔をするルークの手に、青いカプセルとコップに入った水を渡す。
「いつもなら昼過ぎなのに……なんで今なんだ?」
「ほら、これから稽古つけてもらうだろ。どうせ夕方までかかるだろうから今のうちに飲んどけ。」
「しょーがねぇなぁ……」
しぶしぶと、慣れた様子で薬を飲み込む。
この薬はルークを男として保つ為の薬。
毎日これを飲まないとルークは徐々に性別をなくしてしまう。
医師の話では、女性化させる薬もあるらしい。
俺としてはそっちを飲んでもらいたい。
「毎日、毎日薬くすりクスリ!かったりー!!」
「文句いうなって。男で居たほうが何かと都合がいいだろ。」
「だってさぁ。」
一度ルークは薬を飲まなくなった時期があった。
「筋力がおちたー!背が伸びねぇー!つうか縮んだー!って喚いてたのはどこのどいつだ?」
体の硬質さが取れて、中性的なルークはそれはそれは可愛かったんだが。
「あーあ、どれもこれも全部マルクトのせいだー!」
七年前の誘拐。完璧に男だったルークが性別を持たずに帰ってきた。
その直ぐ後だ、俺が、『思い出した』のは。
だからこそ……
「ヴァン……。」
稽古をつけるために、近づいてくるヴァン。
「ヴァン師匠!」
必要以上にヴァンと接近して欲しくない。
俺は、その男が危険であることを知っている。
「稽古を始めようか。」
「はい!」
嬉しそうに木刀を握るルーク。
俺は下がって二人の様子を見守る。

彼女が、来るんだろうな。
あぁ、やっぱり。
歌が……聴こえてくる……
「ルーク…直ぐ助けに行くか…らな……。」
そこで俺の意識は途絶えた。


超振動が起こった気配を感じる。第七音素の集束地点はタタル渓谷。
ルークには超振動が起こる前までの記憶しか見せていない。
ここで違った行動を取られては出会えるものも出会えなくなりますからね。
「た…大佐が笑ってる……。」
そばにいたアニスが恐ろしいものでも見たかのように顔を歪める。


失ってから気付いた、子供を愛しんでいたことを。

ただ、行く道が少し交わった程度に感じていた。

私が歩む道を貴方も歩いていただけだった。

けれど、今度こそ、貴方と共に歩もう。


私の心はこんなにも貴方を求めているのだから。


ガイが戻ってきたのは死んだ直後なので記憶は結構鮮明。
アニスは大分奔流に呑まれてから戻ってきたので、結構不鮮明。
しかも時間経過と共に、曖昧さに拍車がかかっている。
もちろん大佐は彼らが戻ってきた時に感じ取っていたけど、あえて何もしない。
ガイは本当ははじまりの日の擬似超振動が起こらないようにしようかと思ったけど
ジェイドには会ったほうがいいと思って止めなかった。
もちろん大佐はそんなガイの考えを予測済み。
と、補足。
ガイが変態チックなのは仕様です。仕様です。(二回言った!)

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ガイの場合

はじめは、怨んでいたさ。
だけど帰ってきたあいつはあいつじゃなくて。
何も知らない、何も出来ない赤ん坊同然で。
一緒に旅をした。その中で成長していくあいつの姿が嬉しくて。
でも、馬鹿な決断をしたと思った。
忘れられるわけがない。
忘れたいなんて思うわけがない。
「ルーク……俺もやっとお前のところに行けるよ……」

なーんてさ……
「俺恥ずかしー!!!」
「がぃ?なにがはじゅかちー?」
「うわっルークいたのか!…なんでもないさ。それよりどうした、今は書き取りの時間のはずだぞ?」
何故か俺は還って来た。
おぼろげに、そう思う。
薄っすらとこれから何が起こるかわかっているんだ。
予知能力っていうのとは違うんだと思う。
なんとなくだが、そうだな、過去の世界にきちまったような、違うか。
ふっとした時に記憶が舞い降りてくるような。
ぶつくさと、あの先生怖いから嫌いなんて言っているルークを宥めすかして。
「終わったらデザート持っててやるから。」
「ほんと?やくそくだよ!」
走り去っていくルークの小さな背中を見送る。
「今度こそ、守ってやるから……。」


アニスの場合

「イオンの動向を私に報告すること、それがお前の仕事だ。」
「はい…わかりまなんでモースが生きてんの!?
「アニス?」
え?え?どういうこと!?
あれ?あれ?なんで私ちっちゃくなってんの!?
なにこれ!?
引き締まったスレンダーなボディは!?腰まで伸ばした綺麗な黒髪は!?
「どういうことだアニス?」
「ハッ!な、なんでもないで~す!」
「……とにかく、今から導師のところへ案内する。よいか、くれぐれも報告を怠るではないぞ。」
これってどういうこと……?
過去?夢?あれ……?
あ、違う。これが今だ。なんかよくわかんないけど、夢…だったのかな……大人になった夢……。
でも……
「アニス、入りなさい。」
「あ、はーい!」
優しい顔をしたイオン様。
「はじめまして、アニス?僕が導師イオンです。」
「はじめ…まし、て……。」
「どうかしましたか?」
イオン様だ、イオン様だ、イオン様だ。
「なんでもないです。あ、わたくし、新ダアト教だ…」
あ、違う!
「…………。」
やっば…すっごい怪訝な目で見られてる……
「神託の騎士団導師守護役に配属になりました、アニス・タトリン奏長です、イオン様。」
「す、すいませ~ん。急な配属でちょっと頭が混乱しててぇ~。」
適当にごまかしたけど、後から何言われるか……怖いよぉ。
「そうですか、それは申し訳ありません。」
「いえいえ~、イオン様が謝ることじゃないですよぉ~。」
「これから、よろしくおねがいしますね。アニス。」
「……はい!」
何でかはわからないけど、イオン様の笑顔を見てすっごく思ったの!
絶対、ぜぇったい、イオン様を守ろうって!


ガイとアニス編。
ここで解説。魂はプラネットストームを漂ってその後、セフィロトへ還る。
その過程で過去の記憶を失って、セルパーティクルから新たな命として宿る為に出て行く。
だけど、逆行していく人達は魂の状態になって直ぐ、
過去の自分の転機の時「など」に戻ってしまうので、記憶が完全に消え去らない。
そんな設定。過去このお話の中で語った、記憶は元素説を既に否定_| ̄|○
ちなみにアニスはきっと未来で「新ダアト教団大詠師アニス・タトリン元帥」
だったんじゃないかなぁなどと思っただけ。思っただけ。

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それぞれの 三十路編

ジェイドの場合

「貴方は…僕か。」
「おや、流石は私ですね。状況把握が的確で助かります。」
ジェイド・カーティス少尉。髪は現在の私よりも大分短く、言動に柔らかさはない。
「随分と薄気味悪い話し方だ。」
当時はかなり扱いにくい子供だったのだろう。と、目の前の自分を見て苦笑いが漏れる。
「おや?この口調のお陰でかなり得をするんですがねぇ。」
この眉間の皺はいつ取れたのだろう?
「……。それで、何をしにきた?」
動揺を隠しているつもりなのだろうが、今の私には手に取るように心境が把握出来てしまう。
「私なら、わかっているでしょう?」
「あぁ……。こんな馬鹿らしいことをするまでに、未来の自分が狂気へと落ちてしまったことはね。」
何故、僕はこうなった?何が、僕をこうまで変えたのだろう。
「おやおや。人間味が出た、と言って欲しいものです。」
やれやれ、と肩を竦める。これは本当に未来の僕なのか?
こんな大人にだけはなりたくなかった。と、思う。
「やるなら早くすればどうだ?」
生きることに意味なんて見出せないでいた。
見出せたのは、つい一年前。
「少しは足掻いてみようと思わないのですか?」
足掻けば変えられることを、今の私は知っている。
「力の差は歴然。尚且つ、生きることに興味はない。」
それでも、少しは思う。
自分がこの年になり、何故こうなったのか、知りたかった、と。
「まぁ、私は私ですから。」
「そうだ。僕は僕だ。」

「髪が短いのはやはりなれませんねぇ。」
魂を侵蝕はしたが、肉体は私のものであった為、元素の再構築を施す。
少し低くなった背、短い髪。
瞳の色も忘れずに変えて。
さぁ、物語の再開ですね。


ディストの場合

「うぁわああああああああああ」
「少しは落ち着いて話を聞きなさい!」
あぁ、全く、コレが本当に過去の私だというのでしょうか?
おじさん誰?なんて言われた時は頭にきましたが、未来から来た貴方自身だと言った瞬間からのこの取り乱しよう。
情けなくて涙がでますよ。
「おやおや、なにやら苦戦してるようですねぇ。」
「ジェイド!助けて!」
口調から察しなさい!縋り付く少年に嫌気がさしてきましたよ……。
「私、こんなに馬鹿だったんですかねぇ……。」
「過去形にする必要もないくらい今の貴方も馬鹿です。」
「ちょっとジェイド!?」
きょとんと、ジェイドの腰に縋り付いたままのサフィール。
「ジェイ……ド?」
そんな哀れな者を見る眼をしないで貰いたいですね。私まで哀しくなるじゃないですか。
「とっとと終わらせましょう。再構築の作業もありますから。」
「わかりましたよ。すいませんね……過去の私……。」

少し後味の悪い魂の融合。
突然の恐怖。融合後に、その記憶も引き継いで。
「本当に怖かったんですねぇ……。」
「そうなるのは予想していたはずです。それでも付いてきたのは貴方ですよ。」
「わかっていますよ!」


肉体ごと融合したことにより、音素集結の構成をし直さなければ。
「そういえば貴方はどうしたのですか?体のほうは。」
「あぁ、綺麗に元素に分解してあげましたよ。」
…………。
自分の体だというのに、この男は…………。
「しかし、これから難関ですねぇ。」
「何がです?」
「ピオニーですよ。あれは勘が常人を逸脱してますからね。」
「確かに、誤魔化すのは大変そうですねぇ。」
そもそも、誤魔化せるとは思ってはいませんが。


ピオニーの場合

あーぁ。死んだと思ったら子供の頃にタイムスリップして一日。
暗雲渦巻く宮廷内。王位継承者が事故で死に、病で死に。
こんな体験もう二度としたくなかったんだがなぁ……。
ぶうさぎを飼うことも許されず。ツンツンのジェイドは軍に入って遊びに来ないし。
ジェイドの腰ぎんちゃくのイジイジサフィールは遊びに来る訳も無い。
つまらんなぁ……
「ピオニー様ぁ、お友達が遊びにいらっしゃいましたよ!」
ん?おかしいな。二人が遊びにくるなんて記憶にないぞ?
「通して。」
「はぃ。」
メイドが二人を通し、部屋を出る。
明らかに、空気が違う。
これは、からかいがいがあるかもしれん。
「おージェイド!サフィール!なんだなんだ、二人して遊びにくるなんて珍しいじゃないか。」
「……ピオニー。」
あ、いかん。ジェイド気付いたな。
「ん~なんか感じが違うなぁ、ジェイドはいつも通りとして、サフィールお前本当にサフィールか?」
いじめの標的をサフィールに絞る。
「な、何を……わ…僕は僕だよ!」
ジェイドが眉を寄せて額を押さえる。
この年ではしていなかった筈の、あきれている時の癖だ。
「なんか喋り方も違うなぁ~?」
「そっ……そんなことないよ!」
助けを求めるようにジェイドをチラチラと見ているが、状況を把握しているジェイドが助け舟を出すわけが無い。
「なんだろうなぁ~今にもナルシズムの極致に至って、ジェイドの口調を真似しだしそうな感じなんだがなぁ。」
「真似じゃありませんし私はナルシストでもありませっ……っあ……。」
蒼白な顔をしたサフィールに静かに怒りを表すジェイド。
こいつらが、忽然と姿を消してから、久しくなかった楽しさ。
これは久しぶりに面白いものをみた。
「……まぁ、いいでしょう。お久しぶりです、陛下。」
「まだ陛下ではないがなぁ。これはお前の仕業か?」
「まぁ、そうですね。私のせいとも言えますが。貴方が勝手に釣られてきただけとも言えます。」
「あ…あの……?」
状況を把握出来ていないサフィールに厭きれた顔でジェイドが説明する。
「ローレライが言っていたでしょう。私にくっついてきてしまう人の可能性を。」
「これは一体どういうことだ?もちろん説明してくれるんだろう?」

その後、信じられない話を二人から聞いたピオニーは面白くなってきたじゃないか。と大いに笑った。


ジェイドがピオニーの変化に気付いたのはジェイドが既に人じゃないからです。
陛下はほら、そういうの敏感、なのが常識ですよね。だからそれに則った。
さて、何人逆行してくることやら。

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HN:
理人
性別:
非公開
職業:
在宅でPCで何かする人。
趣味:
読書(SS含む)
自己紹介:
完結済みを一気読み(見)するのが好きなため、オワコンに嵌る率が高い。
三大欲求の頂点が睡眠欲。春夏秋冬眠。
仕事が立て込むと音信不通。仕事するか寝るかしかしなくなる。
たまに食う。

 

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