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それぞれの 三十路編

ジェイドの場合

「貴方は…僕か。」
「おや、流石は私ですね。状況把握が的確で助かります。」
ジェイド・カーティス少尉。髪は現在の私よりも大分短く、言動に柔らかさはない。
「随分と薄気味悪い話し方だ。」
当時はかなり扱いにくい子供だったのだろう。と、目の前の自分を見て苦笑いが漏れる。
「おや?この口調のお陰でかなり得をするんですがねぇ。」
この眉間の皺はいつ取れたのだろう?
「……。それで、何をしにきた?」
動揺を隠しているつもりなのだろうが、今の私には手に取るように心境が把握出来てしまう。
「私なら、わかっているでしょう?」
「あぁ……。こんな馬鹿らしいことをするまでに、未来の自分が狂気へと落ちてしまったことはね。」
何故、僕はこうなった?何が、僕をこうまで変えたのだろう。
「おやおや。人間味が出た、と言って欲しいものです。」
やれやれ、と肩を竦める。これは本当に未来の僕なのか?
こんな大人にだけはなりたくなかった。と、思う。
「やるなら早くすればどうだ?」
生きることに意味なんて見出せないでいた。
見出せたのは、つい一年前。
「少しは足掻いてみようと思わないのですか?」
足掻けば変えられることを、今の私は知っている。
「力の差は歴然。尚且つ、生きることに興味はない。」
それでも、少しは思う。
自分がこの年になり、何故こうなったのか、知りたかった、と。
「まぁ、私は私ですから。」
「そうだ。僕は僕だ。」

「髪が短いのはやはりなれませんねぇ。」
魂を侵蝕はしたが、肉体は私のものであった為、元素の再構築を施す。
少し低くなった背、短い髪。
瞳の色も忘れずに変えて。
さぁ、物語の再開ですね。


ディストの場合

「うぁわああああああああああ」
「少しは落ち着いて話を聞きなさい!」
あぁ、全く、コレが本当に過去の私だというのでしょうか?
おじさん誰?なんて言われた時は頭にきましたが、未来から来た貴方自身だと言った瞬間からのこの取り乱しよう。
情けなくて涙がでますよ。
「おやおや、なにやら苦戦してるようですねぇ。」
「ジェイド!助けて!」
口調から察しなさい!縋り付く少年に嫌気がさしてきましたよ……。
「私、こんなに馬鹿だったんですかねぇ……。」
「過去形にする必要もないくらい今の貴方も馬鹿です。」
「ちょっとジェイド!?」
きょとんと、ジェイドの腰に縋り付いたままのサフィール。
「ジェイ……ド?」
そんな哀れな者を見る眼をしないで貰いたいですね。私まで哀しくなるじゃないですか。
「とっとと終わらせましょう。再構築の作業もありますから。」
「わかりましたよ。すいませんね……過去の私……。」

少し後味の悪い魂の融合。
突然の恐怖。融合後に、その記憶も引き継いで。
「本当に怖かったんですねぇ……。」
「そうなるのは予想していたはずです。それでも付いてきたのは貴方ですよ。」
「わかっていますよ!」


肉体ごと融合したことにより、音素集結の構成をし直さなければ。
「そういえば貴方はどうしたのですか?体のほうは。」
「あぁ、綺麗に元素に分解してあげましたよ。」
…………。
自分の体だというのに、この男は…………。
「しかし、これから難関ですねぇ。」
「何がです?」
「ピオニーですよ。あれは勘が常人を逸脱してますからね。」
「確かに、誤魔化すのは大変そうですねぇ。」
そもそも、誤魔化せるとは思ってはいませんが。


ピオニーの場合

あーぁ。死んだと思ったら子供の頃にタイムスリップして一日。
暗雲渦巻く宮廷内。王位継承者が事故で死に、病で死に。
こんな体験もう二度としたくなかったんだがなぁ……。
ぶうさぎを飼うことも許されず。ツンツンのジェイドは軍に入って遊びに来ないし。
ジェイドの腰ぎんちゃくのイジイジサフィールは遊びに来る訳も無い。
つまらんなぁ……
「ピオニー様ぁ、お友達が遊びにいらっしゃいましたよ!」
ん?おかしいな。二人が遊びにくるなんて記憶にないぞ?
「通して。」
「はぃ。」
メイドが二人を通し、部屋を出る。
明らかに、空気が違う。
これは、からかいがいがあるかもしれん。
「おージェイド!サフィール!なんだなんだ、二人して遊びにくるなんて珍しいじゃないか。」
「……ピオニー。」
あ、いかん。ジェイド気付いたな。
「ん~なんか感じが違うなぁ、ジェイドはいつも通りとして、サフィールお前本当にサフィールか?」
いじめの標的をサフィールに絞る。
「な、何を……わ…僕は僕だよ!」
ジェイドが眉を寄せて額を押さえる。
この年ではしていなかった筈の、あきれている時の癖だ。
「なんか喋り方も違うなぁ~?」
「そっ……そんなことないよ!」
助けを求めるようにジェイドをチラチラと見ているが、状況を把握しているジェイドが助け舟を出すわけが無い。
「なんだろうなぁ~今にもナルシズムの極致に至って、ジェイドの口調を真似しだしそうな感じなんだがなぁ。」
「真似じゃありませんし私はナルシストでもありませっ……っあ……。」
蒼白な顔をしたサフィールに静かに怒りを表すジェイド。
こいつらが、忽然と姿を消してから、久しくなかった楽しさ。
これは久しぶりに面白いものをみた。
「……まぁ、いいでしょう。お久しぶりです、陛下。」
「まだ陛下ではないがなぁ。これはお前の仕業か?」
「まぁ、そうですね。私のせいとも言えますが。貴方が勝手に釣られてきただけとも言えます。」
「あ…あの……?」
状況を把握出来ていないサフィールに厭きれた顔でジェイドが説明する。
「ローレライが言っていたでしょう。私にくっついてきてしまう人の可能性を。」
「これは一体どういうことだ?もちろん説明してくれるんだろう?」

その後、信じられない話を二人から聞いたピオニーは面白くなってきたじゃないか。と大いに笑った。


ジェイドがピオニーの変化に気付いたのはジェイドが既に人じゃないからです。
陛下はほら、そういうの敏感、なのが常識ですよね。だからそれに則った。
さて、何人逆行してくることやら。

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プロフィール

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在宅でPCで何かする人。
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読書(SS含む)
自己紹介:
完結済みを一気読み(見)するのが好きなため、オワコンに嵌る率が高い。
三大欲求の頂点が睡眠欲。春夏秋冬眠。
仕事が立て込むと音信不通。仕事するか寝るかしかしなくなる。
たまに食う。

 

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