今日、全てがはじまる。
ルーク、貴方との再会を楽しみにしていますよ。
「お、なんだ。そんなに落ち込んでないんだな。」
ヴァンが導師捜索に出るという話を聞いた直後の割には、落ち込んだ様子じゃない。
「んー、なんかなぁ。ニ、三日前に夢でさ……。」
「あー、例の予知夢か?」
何年前からか、ルークは数日後に起こることを夢で見るようになっていた。
それは俺みたいな、なんとなく心が、覚えてる。というのじゃなくて。
その日に起こることが完璧に掌握出来るらしい。
夢と違う行動をあえて起こしたこともあったらしいが、今では「めんどくせー」らしく、夢のまま行動することにしているらしい。
ただ、何もかもその通りにすれば夢通りに展開するわけでもないらしい。
あのルークは何もしなくても完全に男だったからなぁ。
「んで、なんか用か?」
「ん、あぁ、ほら薬。今日の分。」
嫌そうな顔をするルークの手に、青いカプセルとコップに入った水を渡す。
「いつもなら昼過ぎなのに……なんで今なんだ?」
「ほら、これから稽古つけてもらうだろ。どうせ夕方までかかるだろうから今のうちに飲んどけ。」
「しょーがねぇなぁ……」
しぶしぶと、慣れた様子で薬を飲み込む。
この薬はルークを男として保つ為の薬。
毎日これを飲まないとルークは徐々に性別をなくしてしまう。
医師の話では、女性化させる薬もあるらしい。
俺としてはそっちを飲んでもらいたい。
「毎日、毎日薬くすりクスリ!かったりー!!」
「文句いうなって。男で居たほうが何かと都合がいいだろ。」
「だってさぁ。」
一度ルークは薬を飲まなくなった時期があった。
「筋力がおちたー!背が伸びねぇー!つうか縮んだー!って喚いてたのはどこのどいつだ?」
体の硬質さが取れて、中性的なルークはそれはそれは可愛かったんだが。
「あーあ、どれもこれも全部マルクトのせいだー!」
七年前の誘拐。完璧に男だったルークが性別を持たずに帰ってきた。
その直ぐ後だ、俺が、『思い出した』のは。
だからこそ……
「ヴァン……。」
稽古をつけるために、近づいてくるヴァン。
「ヴァン師匠!」
必要以上にヴァンと接近して欲しくない。
俺は、その男が危険であることを知っている。
「稽古を始めようか。」
「はい!」
嬉しそうに木刀を握るルーク。
俺は下がって二人の様子を見守る。
彼女が、来るんだろうな。
あぁ、やっぱり。
歌が……聴こえてくる……
「ルーク…直ぐ助けに行くか…らな……。」
そこで俺の意識は途絶えた。
超振動が起こった気配を感じる。第七音素の集束地点はタタル渓谷。
ルークには超振動が起こる前までの記憶しか見せていない。
ここで違った行動を取られては出会えるものも出会えなくなりますからね。
「た…大佐が笑ってる……。」
そばにいたアニスが恐ろしいものでも見たかのように顔を歪める。
失ってから気付いた、子供を愛しんでいたことを。
ただ、行く道が少し交わった程度に感じていた。
私が歩む道を貴方も歩いていただけだった。
けれど、今度こそ、貴方と共に歩もう。
私の心はこんなにも貴方を求めているのだから。
ガイが戻ってきたのは死んだ直後なので記憶は結構鮮明。
アニスは大分奔流に呑まれてから戻ってきたので、結構不鮮明。
しかも時間経過と共に、曖昧さに拍車がかかっている。
もちろん大佐は彼らが戻ってきた時に感じ取っていたけど、あえて何もしない。
ガイは本当ははじまりの日の擬似超振動が起こらないようにしようかと思ったけど
ジェイドには会ったほうがいいと思って止めなかった。
もちろん大佐はそんなガイの考えを予測済み。
と、補足。
ガイが変態チックなのは仕様です。仕様です。(二回言った!)

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