死の定義。
心肺機能の停止。
魂の帰化。
だがしかし、そのどれにも当てはまることはなく。
その瞬間私は確かに心が死んでいくのを感じた。
覚えていることは、適当に挨拶を交わし、早々にタタル渓谷を去ったこと。
共に付いてきた、素直に喜べない表情の聖獣をチーグルの森へ帰したこと。
陛下にしばらくの休暇を申請し、その了承を得たこと。
休暇終了と共に、退役を願い出、受理を待たずにグランコクマを去ったこと。
あらゆる可能性を検討し、検証し、いずれもことごとく失敗した。
魂の分離は、人智が成し得ることが出来ないのは重々承知している。
だが、私は打ち込み、没頭し、足掻いている。
「……ジェイド。いい加減やすんだらどうです?この実験の検証は私だけで十分ですよ。」
「…………。」
グランコクマを去る前、私は獄中のディストを連れ出した。
肉体を構成する音素の解析はいとも容易かったと言うのに。
魂とは、それを構成するものとは?
ルーク ルーク ルーク ルーク ル ーク ルー ク ル ーク ルーク ルーク ル ーク ル ーク ルーク ルーク ル ー ク ルーク ルーク ル ー ク ル ーク ル ー ク ルーク ルーク ルーク ルーク ル ー ク ルーク ルーク ルー ク ルーク ル ーク ルー ク ル ーク ルー ク ルー ク ルー ク ル ーク ルーク ル ー ク ルー ク ルーク ル ーク ルーク ルー ク ルー ク ル ーク ルーク ルー ク ルーク ル ーク
専攻分野の違いから、貴重な意見が聞けることもある。利用価値がある。
音素が集結することにより、集合体は意思を持つ。
それは魂との定義付けが出来るのだろうか。
「クックックックック……」
「貴方は完全に狂っている……ジェイド…………。」
ビックバン、大爆発。
同存在であるレプリカ情報回収の為、音素乖離しレプリカを吸収。
オリジナルと再構成される現象。
レプリカの記憶はオリジナルに継承され存在が消滅する。
憎い
記憶は魂か。
記憶と魂の違いは。
記憶、それは元素の結合により構成された記憶媒体。
五感で感じ取った感覚は記憶媒体によって管理される。
ビックバンによって記憶が継承されるのはレプリカが元素を用いず、第七音素のみで構成されるから。
だが、ここで疑問が生じる。
元素と音素は似て非なるもの。
音素で構成されるものが、元素に変更される。
それは可能なのだろうか……
そもそも、レプリカは元素を用いずに作られる為、欠陥が多い。
音素の種類に対し元素の種類のほうが圧倒的に多いからだ。
いや、音素自体が元素の一端とするならば……
「そこの洟垂れディスト。」
「は、洟垂れとはなんですか!洟垂れとは!薔薇!薔薇のディスト!」
「そろそろ食料が尽きるはずです。それと、フォミニン、フォロシウム、セルフォーマ、パーロニウムの在庫が少なくなっています。」
「はいはい、わかりました。行ってきますよ!」
「文句を言っている割には嬉しそうですが。あぁあなたは昔から虐められるのが大好きな変態でしたね。」
「だぁれが!私は貴方がしょうっ……。戻るのに2日はかかると思いますから。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
ケテルブルクのディストの研究所が、巧妙に隠された場所にあることが幸運だった。
ディストの脱獄を手引きした罪で、もちろん軍位は剥奪され、私も今では追われる身。
あくまで剥奪、ということは、陛下は退役を却下したということだろう。
わざわざ、国が汚名を被る必要性は無いというのに。それがあの方なりの友情の示し方なのだろうか。
カレンダーの無い研究所。
今は一体何日だろうか。
ともかく、今は魂の構成を……
夕日 怯 紅 光 白 純 緑 闇 焔 ルーク ルーク ルーク
記憶と魂が別のものであるならば、ビックバン現象により引き継がれるのは記憶のみ。
それは魂の消滅を意味するのか。
ふざけるな、認めない。
「ハハハハハハ……ハハ…」
ガツッガツッガツッガツッガツッガツッ
「今、戻りまし……ジェイド!やめなさい!手が血だらけじゃないですか!」
「クックックックック……ハッハッハ…ハハハ…………。」
完全同位は身体のみに現れる現象。
そこに魂の同位は見られない。
つまり、魂は元素によって構成されるものではない。
ならば何によって?
音素集合体が持つ意思は魂として……いや、これについての考察は終わっているはずだ。
魂と記憶の相違……
違う、それは他の検証が済んでからのはずだ。
何を、何を考えていた、何を研究していた、思い出せ、思い出せ、思い出せ。
ん?右手に包帯が巻かれている。
解いてみれば瘡蓋に覆わた拳。
どこかに打ち付けたのだろうか?
ふと視線を上げると壁に血痕を拭った後。
まさか……この私が記憶の欠如?
ありえない。
机に散らばった研究資料をかき集める。
ディストが買い出しに出てから何時間経ったのだろうか。
「そう……か…………。」
「どうかしたんですか?」
「魂の構成なんて、最初から解析出来るわけがない。」
完全同位体の性格、性質の完全同位は立証されない。
つまり、それは同位されるものではない。
完全同位体は振動数の違いも見られない。
記憶は音素により構成されるものではない。元素によって構成される。
しかしレプリカは音素のみで構築されている以上、記憶と呼べるものが存在しない。
「人智を超えている……今の知識だけではどうあがこうと結果はでない……。」
何も出来ない。何も。
研究所に転がる、数多の被験者とレプリカ。
全てが無駄だった。
「研究は終わりです。私は出て行きます。」
「ちょっとジェイド!?どういうことです!?」
「私には他に為すべきことが出来ました。付いてくるなら、勝手にどうぞ。」
魂の分離さえ出来れば、どうにか出来ると思っていた
私の望むルークは決して戻ってくることはない
ルークは、もうこの世界にはいない
その瞬間私は確かに死んだ
二度とルークに会えぬのならば
ならばこの世界に何の意味があるというのか。
これは酷い。ごめんなさい。
今回無駄にカラフル(?)になっていますが、ジェイドの狂い度だと思ってください。
台詞以外でしっかりと黒いのは本来(?)のジェイドです。
こんな説明入れなくていいくらい文章力があればいいのですが。
なんか、元素、音素、構築、定義を考えてたら私のほうが気が狂いそうでした。
ゲームの矛盾点に突っ込み入れて書こうとしちゃいけないというのがよくわかりました。

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