私を保ったまま、生った。
「これからどうするのです?」
「少し黙っていて貰えますか。」
この仮説が正しいとすれば、マクスウェルのような音素達は記憶を下に人格を演じていたと言える。
まるで譜業人形が流暢にしゃべるように。そこに自らの思考は存在していない。
だからこそ、私は私のまま。
「バチカルに向かいます。」
「はぁ!?どういう風の吹き回しです?あれほどバチカルは避けていたっていうのに。」
避けていたのではない。行く必要がなかったまで。
「貴方は着いて来ないでください。」
「久しぶりだな、ジェイド……。」
「えぇ、タタル渓谷以来ですね。あぁ、忘れていました、お誕生日おめでとうございます。」
あれから、あの希望を砕かれた日から既に二年が経っていた。
狂気に落ちていく過程を、私は音素として視た。
「ありがとう……それで、俺はどうするべきだ?お前を捕まえるべきか?逃がすべきか?」
帰ってきた『ルーク』は、インゴベルト六世陛下の家臣として勤め、この度正式にナタリア王女との婚約が決まった。
「捕まえていただいても結構ですが、その前に質問したいことと、お願いしたいことがあります。」
「質問?答えは全部あんたの中にあるんじゃないか?」
眉を顰める『ルーク』
「確かに、そうですね。まぁ、確信を得たいだけですから。」
困ったように頷く。ルークを彷彿とさせるその顔。小さく、溜息が漏れる。
「過去の貴方の記憶、ルークとアッシュで在った頃の記憶は混濁してはいませんか?」
「混濁……そう言われると、そうかもしれない。」
「それでは、今の貴方は?」
質問の意図が汲み取れるだろうか。
「……。そうだな、オリジナルでもレプリカでも無く、俺はルークだ。」
大変結構。
「ありがとうございます、『ルーク』。それではお願いなのですが、貴方の過去の記憶を私に下さい。」
きょとんとした『ルーク』に構うことなく、私は元素を読み取っていく。
『ルーク』にルークの記憶は残さない。その記憶はルークだけのもの。
混濁した記憶の整理は後でゆっくり行えばいい。
「……これで用事は済みました。あぁ、最後に質問を。貴方と私がはじめて会ったのはどこでしたか?」
ぼんやりとした顔の『ルークが』答える。
「……タタル渓谷…。」
結果は上々。
「さて、後はローレライに会うだけですねぇ。」
「ローレライに会って、何か変わるんですか?」
「えぇ、まだ憶測の段階ですが、楽しいことになると思います。」
音素の集束、集結。
構成されてゆく第七音素、ローレライ。
それは固有の形を持たず、虚ろに、体の形を取る光のようにも見える。
―私を呼んだか、統べる者よ―
「えぇ、貴方に質問とお願いがありまして。」
―答えよう、そして叶えよう―
「おや、すんなり協力していただけるとは思っていなかったのですが。」
―お前の望みは、すなわち私の望みでもある―
「貴方もずいぶん自分勝手な方ということですか。まぁいいでしょう。
質問は一つ。貴方は時間を操ることが出来るか。」
―答えは、否。だがしかし、過去へと魂を辿ることは出来る―
「それはすなわち、辿るべき魂がある場合に限り、移動が可能である。ということでしょうか?」
―その通り―
「私が過去へと遡ったとしても、この力は消失するということですか。
それでは意味が無い。それではルークを救えない。」
―私との融合を果せば、それ以上のことも出来よう―
「おや、融合は遠慮したいですねぇ。貴方の場合は魂があるようですので、私が私でなくなるのは困ります。」
―回帰した後に、私を還せばよい。放たれた私の魂は、私へと還るのだから―
「ふむ……いいでしょう。」
―だが、一つ問題がある。
お前と魂が触れ合った者が 今を生きるその者が死した後
過去へと遡ったお前の魂に引き釣られ回帰する可能性がある
記憶は魂に影響を及ぼす 魂は記憶する―
「さしたる問題はありません。」
―ならば融合を、そして回帰を―
ジェイドが光に包まれてゆく様を見ていた。
そのまま、光が集束してゆく。
「あ、ちょっと待ちなさい!私も連れて行きなさぃ!!」
―おや、気付きましたか。しかたありませんねぇ―
そうして、私と、この男は過去へと向かうのであった。
そしてわたしは貴方に逢いに行く
今度こそ、貴方と歩もう。愛しき子供よ
ローレライを捏造しまくり(爆
そしてファンタジアとFF7ネタ使いすぎ。
我がサイトのジェイド大佐はついに完璧に人間から脱したようです。
あれー?こうなる予定じゃなかったんだけどなぁ……?
ちなみに「生った(なった)」って書くと「生えた」と読みそうになるのは私だけだろうか。
でも「成った、為った」じゃ違うしなぁ
あぁ、そろそろギャグが書きたい……_| ̄|○
そういえば、『ルーク』はルークでもアッシュでもない。
と言っていますが、ルークの記憶を保持したアッシュです。
でも記憶を保持しているが故に、性格の変移が起こり、その説明が己でつかず、どちらでもないと言った。
ジェイドはそのことを見透かしているのは当たり前です。
なんて記載を、作中でしやがれ私、ですね。

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