非常ハッチが開いた瞬間、ミュウの炎をお見舞いする。
階段を転げ落ちた兵士に邪魔され、銃口を定められないでいた女にジェイドが槍で銃を弾き飛ばす。
その鮮やかな捌きに見とれていたら後ろから電撃を食らった。
「アリエッタ!導師は?」
「大丈夫……。でも……。」
銃口を向けられて、身動きが取れない。
くっそ、どうすりゃいいんだよ!
その時だった。タルタロスの装甲が大きな爪で破られ、ライガ・クイーンが飛び出し、女を踏みつけにする。
「くっ……どういうことだ、アリエッタ!」
「マ…ママ!?」
ライガ・クイーンが一啼きする。
その隙にティアがイオンを連れて避難し、ジェイドがアリエッタって奴を捕らえた。
「さ、おとなしくタルタロスの中へ入っていただきましょう。」
ライガ・クイーンは踏みつけにしていた足をどける。
女が諦めたようにタルタロスへと入っていった。
「貴方もです。魔物を連れて中へ。」
「イオンさま……ママ……あの…あのっ……」
「ギャオォオオン!」
「言うことを聞いてください、アリエッタ。」
アリエッタが悲しそうに階段を登っていき、ハッチが閉まった。
「なぁママってどういうことだ?」
さっきは聞けない状況だったけど正直気になって仕方なかったんだよな。
「さぁ?ライガ・クイーンに聞いてはどうです?」
「あー、まぁそうなんだけど。こいつの通訳うぜぇんだもん。」
語尾にですのー、ですのー。ってなんかむかつくんだよな。
まぁそれでも仕方ないからミュウに通訳をさせると、とんでもない話だった。
アリエッタって奴は小さい頃にライガ・クイーンが拾ったらしい。
その時ライガ・クイーンは生まれたばかりの子供を亡くしたばかりで、育てる気になったって話だ。
そんで、それがあのアリエッタなんだと。
昔ラムダスに勧められて「猛獣に育てられた少女」とか言う本を読んだことあるけど、
まさか本当にそんな状況で育った奴がいるなんて思いもしなかった。
あの時ライガ・クイーンを倒したら、アリエッタの親を殺すことになってたんだ……。
よかった、本当に良かったと思う。
ただでさえ生みの親が居ないのに、育ての親まで亡くしたなんて悲しすぎるもんな。
「なぁ、お前はこれからどうするんだ?」
ミュウの通訳を介して会話をする。
「ライガ・クイーンさんは子供を連れて住める場所を探すそうですの!」
ブタザルなんかよりよっぽど役に立つんだけど、しょうがねぇよな。
生まれたばかりの仔ライガは既に立って原っぱを走り回ってる。
「あのさ、勝手なお願いだってのはわかってんだけどさ……。」
俺が言い淀むとライガ・クイーンが鳴いた。
「人の居ない場所を探すそうですの!
ご主人様に助けられたから、自分と子供は二度と人を食べないそうですの!」
「そっか。ありがとうな、ライガ・クイーン!」
ライガ・クイーンが俺に擦り寄る。
毛がふわふわしてて気持ちいい。
「あぁ、別れの前に、アリエッタにもう私達を襲わないように言ってもらえませんか?」
「もう言ったそうですの!」
あぁ、さっき啼いてたのがそれか?
「でも、従ってくれるかはわからないそうですの!申し訳ないだそうですの!」
「まぁ、アリエッタには立場がありますからね。致し方ないでしょう。
その言葉が抑止力にはなってくれると思いますから、それだけで十分です。」
ライガ・クイーンが鳴くと仔ライガがそばへ走り寄ってきた。
「もう、行くのか?」
肯定するように、頬を一舐めしてから離れ、去っていく。
「ありがとうなー!!」
「いやぁ、しかし、意図せず可哀相なことをしてしまいました。」
走り去るライガ・クイーンと仔供の背中を見守っていると、ジェイドがぽつりと呟いた。
「ん?何がだ?」
タルタロスのマストを見上げるジェイド。
「いえ、なんでも。」
「それで、これからどうしますか大佐?」
昇降機を上げて戻ってきたティアは何故か浮かない顔をしている。
そういやあの銃を持った女のこと教官とか言ってたな……知り合いなんだろうか。
「そうですね。イオン様、アニスはどうしました?」
「それが、奪われた親書を取り戻そうとして魔物に船から落とされてしまって……。
ただ、遺体が見つからないとの話でしたので、無事でいてくれると。」
「まぁ、大丈夫でしょう。アニスですから。」
「そうですね、アニスですから。」
何が大丈夫なのかはわからないけど、確かにアニスなら大丈夫な気がするから不思議だよなぁ。
「それでは、
セントビナーへ向かいましょう。アニスとの合流先です。」
「うぉ!声でけぇよ!」
「あぁ、すみません。」
本当にわけのわからねぇ奴だな、ジェイドって。
「そういえば、中にいる奴ら大丈夫かな……。」
確かタルタロスには百十数名乗ってるって言ってたよな……
「生き残りがいるとは思えません。証人を残しては、ローレライ教団とマルクトの間で紛争になりますから。」
「百人以上が…殺されたってことか……」
「行きましょう。私達が捕まったらもっとたくさんの人が戦争で亡くなるんだから……」
ティアの言葉に頷いて、俺たちはセントビナーを目指しタルタロスを後にした。
歩き始めて直ぐ、捕まった時にダアト式譜術を使ったらしいイオンが体調を崩して座り込んだ。
それで休むことになったんだけど、その時神託の騎士が襲ってきて……
斬った……。
仕方がないって皆が言う。
だけど、仕方がないって、そんな言葉で本当は片付けちゃいけないことだと思うんだ……
「どうしました、思いつめた顔をして。」
答えを求めたわけじゃないけど、ジェイドなら、何か……
「ジェイドは……どうして軍人になったんだ?」
「……人を殺すのが怖いですか?」
答えることが出来ずに俯いて。
「貴方の反応はまぁ、当然だと思いますよ。軍人なんて仕事はなるべくない方がいいんでしょうねぇ。」
世界が平和だったら、戦争なんて起こらない。人が人を殺すなんて、酷いこと皆がしなくて済むのに……。
「俺はどうしたらいいんだろう……」
俺が殺した奴らにだって、タルタロスに乗ってた兵士達にだって、家族とか、未来とかいっぱいあったのに……
「手にかけた者をおもうことが出来るのはいいことです。言ったでしょう?」
「あぁ。」
ジェイドはあの時言った。その感情は大切だって、忘れちゃいけないって。
「私は貴方を護ると言いました。けれど、貴方は戦うと言った。」
「……あぁ。」
「貴方はもう自分で答えを出しているんですよ。」
ジェイドが、優しく微笑んでいる。
「俺が、答えを……?」
「えぇ、そうです。ルーク、貴方には出来ることが沢山ある。
奪ってしまった命を胸に、貴方は今を生きている人々の未来をつくっていけばいい。」
「そうか……俺が出来ること。俺がやるべきこと。」
戦争の、回避。
「ですが、ルーク?自分の命も大切になさい。」
「あはは、それもあの時言われたな。」
多分それは、俺が和平に必要だからとかじゃなくて、純粋にそう言ってくれたんだと思う。
「えぇ。貴方に何があろうと、私が全力で護って差し上げますよ。」
そう言うジェイドの眼は、何かを思い出すような、優しくて寂しい眼をしてた。
「なぁ……なんであんたこんなに俺によくしてくれんだ?」
嫌味ったらしいと思ってたのに、所々で優しくて。
「それは……貴方に死なれては和平が成り立ちませんからねぇ。」
ちぇ、やっぱりそれなのかよ!
「あーあ、聞いて損した!もう寝る!」
「えぇ、お休みなさい。」
まだ野宿に慣れていないせいで、眠りづらいのだろう。何度も寝返りを打つルークにそれでも往く先の夢を。
「つくづく、私は酷い男ですね……。」
それでも、私の欲するルークに至らせる為に。
「傲慢で、強欲で。どうしようもない男ですが、それでも貴方を護りますよ。」
深く夢に落ち始めたルークの瞳にキスを降らせて。
「貴方を愛していますから。」
それが、理由。
なっがいよね!なっがいよね!自覚はしてる。入れなくていいような話まで入れてる自覚はしてる。
でも、どうせ逆行書くなら、納得のいくように、自分が楽しめるように書きたいからっ!!(でも駄文
ガイには可哀相なことをしました(爆笑)。
最初は普通に登場予定だったのですが、ライガ・クイーンが着いて来るように書いてしまったせいで、
こうなりました。
だって着いて来たからには活躍させたかったんだ!
うん、ごめんナイスガイ(爆笑)。

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