そう、誓おう。
貴方を二度と離しはしない。
深遠の世界に、やっと手に入れた焔。
この心の奥底に、やっと灯った柔らかな光。
だから
覚悟してください
「と、なると色々準備しなければならないことが出てきますね」
俺もついていくと言うことで話がまとまった。
「そうだな。ルークの……」
「ガイ、ナタリアは王宮に戻りました。ティアは宿屋でしょう」
言われてガイが眉を顰める。
「知ってるが……」
「指の関節が外れたのでしょう?治すなら早いほうがいいと思いますよ」
「……大佐のせいだろうが……」
「剣が握れなくなりたいのでしたらそのままでもいいと思いますが」
「……くっ……。ルーク、俺ちょっと外に出るから、
く れ ぐ れ も気をつけるんだぞ!」
ボソボソと二人で喋っていたかと思えば急に気を付けろって言われても。
なんに?
「そうですね、転んで怪我でもしたら大変です。きちんと私がエスコートしますからね、ルーク♪」
あぁそういうことか。
「大丈夫だって。ほんとガイは心配性だなぁ」
「そういうことじゃないんだけどな……」
「じゃあどういう事だ?」
(あぁ、そんな首を傾げながら上目遣いで覗き込まないでくれっ!抱きしめたくなる!)
「……ガイ」
「そ、それじゃあ後でなルーク。本当に気をつけるんだぞっ!」
なんだか悔しそうに走り去るガイを見送っていると、ジェイドがぽつりと呟いた。
「憐れですねぇ。もう勝負がついている事を知らないのですから……」
クツクツと笑うジェイドがなんか怖かったけど触れないで置こう……。
「でも、準備ったって何かすることあったっけ?」
「本当にありませんか?ルークは後々戦闘に参加するつもりなのでしょう?」
「……さすがジェイド。俺が考えてることなんてお見通しなんだな」
戦闘参加は在り得ないって感じで話を進められてたから、後でこっそり装備を整えようって思って
たのに……。
「当たり前です。伊達に長生きはしていません。7歳のお子様の考えなんて取るに足りませんよ」
「7歳じゃねぇっつうの!ん?そういや俺何歳なんだ?……えっと……8歳か?……いや、んっと……こっちに来てからの……」
「考えても仕方のないことを考えるのはお止しなさい。回帰した後の年数も加算すれば私は50を超えて
しまいます」
「ぶっは!50!?ジジイじゃん!!」
大声を上げて笑ったら、いきなり顎を掴まれた。
「ルーク、今ここでその口を塞いであげても私は一向に構いませんが?」
な、何をするっつうんだ……。何をされるにしても回避したほうが良さそうな、ジェイドの薄ら笑いに俺は涙目になりそうだ。
「すいません、ごめんなさい、謝りますから勘弁してください」
「よろしい」
満足げに手を放す。ここで謝らなかったら何されてたんだろう……。
「もちろん口付けですよ」
な!ななな!心を読んだ!?つうかくっ……口付けって!!!
「動揺してますねぇ。」
まるで悪役みたいにクックックと笑う。
「……お前…まさか心よ……」
「読めませんよ。いえ、読んだと言えるでしょうね。ルークは単純だから思考の予測が立ちやすい」
今、馬鹿にされたよな……
はぁ、結局どうやったってこいつに勝てるわけはないし、もう考えるのやめよう。
「装備品を買いに行くんじゃねぇのか?」
街に下りるんだとばっかり思ってたら、何故か部屋に戻された。
中では嬉しそうにメジャーを握り締めてるメイドが二人。
「先に着る服をどうにかしないといけないでしょう」
あぁ、そっか。薬を飲まなくなったせいで今までの服がぶかぶかだ。
素直に採寸されてたけど、ふと疑問が出来た。
「薬を飲んでいけば体格は戻るだろ?それならズボンだけしっかりベルト締めれば……」
「それまでブカブカの服で戦闘するつもりですか?動き辛いですよ」
それもそうだけど……
「でもそうなると、体格が戻ってきた時にキッツキツになっちまうだろー?」
「体格が元に戻るまでどれくらいの時間が必要か分かっているんですか?戻りきる前に全て型が
つくでしょう」
むー……
そうこうしてるうちに採寸が終わった。
「全て今のルークに見合うように詰めてください」
ジェイドが大きな袋をメイド達に渡す。
「なんだその袋?」
俺の問いかけにメイドが袋を開ける。
「あー!ベルセルクの称号貰った時の服だ!こっちはワイルドセイバー、げっ、ドラゴンバスター
まで……って、なんであるんだよ!?」
「なんででしょうねぇ?とにかく、明日の朝には間に合うようにお願いします」
俺の疑問をさらっとかわして、ジェイドがにっこりとメイド達に笑いかける。
「かしこまりました。ルーク様が着るんですもの、完璧に仕上げましょうね!」
「えぇ、もちろん!ルーク様、楽しみにお待ち下さいませね」
そう言って頭を下げ、出て行こうとしたメイド達にジェイドが声をかけて何か言っていた。
少し、驚いたような顔をしたけど、その後なんか嬉しそうに頷いて二人は改めて頭を下げると部屋を
出て行った。
「なぁ……」
「私がこちらに戻ってきた時に一緒に持って来たんですよ」
あぁ、そうなのか。ってそれも気になったけど、さっきメイド達に何言ったのか聞きたかったんだけど……。
「さっきメイ……」
「ルークが「これはずっと俺がつけるんだ!」と言って離さなかったトゥッティもありますよ」
「マジで!?」
うわー!マジでトゥッティだ!
「今からこれつけてたら……うわー!すげー!」
(……ちょろあまですねぇ。)
響律譜を見ていた俺には、ほくそ笑むジェイドが見えるわけもなく。
「なぁなぁジェイド!アレあるか!?」
「ありますよ」
微笑みながらジェイドが出したのは、自分の戦闘能力を数値化して見せてくれる音機関だ。
ちゃんと名前があるらしいけどアレで通ってるから、覚えてない。
「今俺のレベルがー……えっ!?いちぃ!?」
なんでだよ!だってアクゼリュスまでは俺…いや、アリアだけど戦闘に参加してたのに!
「一ヶ月も寝たきりでしたからね。いいじゃありませんか。レベル1からトゥッティをつけられれば……」
「早く強くなれるか!そうだよなっ!くぅ~ジェイド、ありがとうな!」
「いえいえ、どう致しまして」
「ん?そういえば今のジェイドってレベルいくつなんだ?封印術も掛からなかったし、その後皆で行動
してた時も戦闘参加してたんだろ?」
「えぇ、そうですが……」
「なぁなぁ、ちょっと見せてくれよ!」
音機関を渡すとジェイドはちょっと躊躇った。
「気を落としても知りませんよ?」
「大袈裟だなー、どうせあっても60くらいだろ?直ぐに追いついてやるって!」
溜息をつきながら、ジェイドが音機関を起動させる。
現れた画面を見ても、俺はその数値が理解出来なかった。
「…………壊れてる……わけじゃないよな?」
「壊れてはいないでしょうね。こちらに来た時からこうでしたから」
画面はどこを見ても0で埋め尽くされていた。
「なんだこれ……レベル000?HP0000?」
「音機関の限界なんでしょう。レベルは1.000以上、HPは10.000以上ってことなのでは?」
「…………ありえねぇー!!!!!」
俺の叫びが屋敷中に鳴り響いた。
「ずっり~……」
拗ねたルークに流石にお手上げ状態だった。
「ですから、言ったでしょう」
「そうだけどさー……」
自分のベットに座り込みながら、頬を膨らます。
「こうなると不便なことも多いんですよ?軍に居た頃なんてディストに音機関の細工をさせて、私が起動
した時には全て偽りの数値が出るようにしたり、日常生活でも気に掛けなければならないことが多いん
ですから……」
実際、私がちょっと力加減を間違えようなんて考えれば、初級譜術でもこの世界を破壊出来てしまい
かねない。
「そういえば、ジェイドはなんだっけ……オンジン?とか言うのになっちまったんだっけ」
「オリジンです。精霊王オリジン」
生りたいと思った訳では無い。が、生らざるを得なかった。
「精霊王なぁー……。なんっつーか、お前がちょちょいって動けば全部解決するんじゃねぇの?」
「ちょちょいと解決出来るなら、既にしていますよ。貴方も知っているでしょう?預言の絶大な力を」
その力を打ち破ることが出来るのは、ローレライと同存在であるルークとアッシュだけだ。
「そうだけど…なんか納得いかねーなぁ」
勢いよく、ベットにルークは倒れこむ。
「第七音素は他の音素とは異質な存在です。私はオリジンであってローレライではありません」
「だけど一度融合したんだろ?」
「確かにしましたがね。ですがお互いの力が反発しあって、制御が恐ろしく大変でした。あのままの
状態で居るのは不可能でしたね。維持しようとすれば、音素が反発し合い、音素力が暴発を起こした
でしょう。この世界が跡形もなく吹き飛ぶ程の……」
「げっ……お前そんなあぶなっかしいことしたのかよ……」
私はベットに腰掛け、寝転がっているルークの頬を撫でる。
「そうですね……それ程までに、貴方を求めましたから……」
その言葉に、ルークの口が音無く、「あっ」と型作る。
「ジェイド……。俺……」
ルークの両腕が伸び、私の肩から背にまわる。
ゆったりとした動作から、不意に力を込めて引き寄せられ、軽く唇が触れた。
(急に胸がキュってした。どうやったらジェイドにこの想いを全部伝えられるんだろう。
言葉が見つからなくて……だから……)
自分から起こした動作に、羞恥が湧き上がったのだろう。
ほんのりと、頬が赤く染まる。
それでも腕に込めた力を緩めない。
子供の面影が消える。
「な…なんだよ……」
唇が触れるか触れないかの距離、それでも私がふと、笑ってしまったのを感じ取ったのだろう。
不服そうに眉を寄せる。
「いえ、お子様にしては誘うのが上手いと思いまして」
「んなっ!」
途端に耳まで真っ赤にして、ルークは背に回していた腕を解き、私の肩を掴み顔を離そうとする。
その力に反発し、有無を言わさず唇を重ねる。
歯列をなぞり、舌を吸えば小さく甘い声が漏れる。
肩を掴んだ指先がフルフルと震える。
声も無く喘ぐ。
密やかに、耐える様がかえって欲情を誘うことをこの子供はまだ知らない。
香ることを知らぬ四肢、求めることを知らぬ舌。
まだだ、まだ早い。
手折るには、まだ。
己を乗っ取らんばかりの欲を諌め、唇を離す。
繋がった唾液に目が行ったのだろう。
子供の面影を取り戻し、焦ったように起き上がると口を拭う。
「やはり、まだまだお子様ですね」
茶化すように肩を竦めれば、いつものように否定の言葉を返す。
その姿にただ笑みを返せば余計に腹を立て、頬を膨らましながらそっぽを向く。
「求めたから……、貴方をこうして手に入れることが出来ました……」
背を向けたルークをそのまま抱きしめる。
「俺は物じゃねー……」
ぽつりと呟く。
今は見えないその顔はまだ怒っているのだろうか、それとも……
この腕に収まる小さな貴方を
私はこれからどうしていこうか
香ることを知らぬ青い蕾を
いつ手折ってしまおうか
今すぐに
いや、まだ早い
いつになるだろう、この獣を放つ日は
戦闘能力を測る音機関とか、かなりネタですよね。
レベルとか自分達で言っちゃってるのかなり阿呆ですよねーw
しっかし、前半すっごいギャグっぽかったのに……
なんで最後の最後でこんな雰囲気になっちゃったんだろう?
急激過ぎて、自分で驚いてみました。
え、でもどうしよう。
こんな雰囲気で終わっちゃったら次の話どうやってはじめればいいの……
うわ…本当にどうしよう……

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