初めて太陽の光がこんなにも優しく感じたのはいつだったっけ
屋敷に軟禁されてた時は四角い空に浮かぶ太陽が眩しすぎて
うぜぇなんて感じてたよな
今想うこの気持ち
きっと いや 絶対一生忘れない
優しい日差しが 俺を歩ませてくれるんだ
「んで、俺かるーくターロ・ウルアシヤなんだけど……。」
あの後ジェイドがみんなに俺が起きたって知らせに行って、みんなから一頻り揉みくちゃにされた。
そのみんな、にアッシュもいて拳骨で殴られたんだけど。
「なんでアッシュがここにいんの?つうかなんで俺家にいるわけ?だっておかしくねぇ?
俺とナタリアが死んだって今頃大慌てになってるはずだろ?それに……」
「一つ一つ答えて行きますから、そんなに慌てないでください。」
ジェイドに止められて頷く。
「まず、今我々の状況が『やり直し』であることを皆承知しています。」
「へ?」
「貴方が寝ている間に関わり合いのあった方々が数多くこちらに戻ってきましてね。」
「ティア、ナタリア、アッシュ。それにインゴベルト陛下とテオドーロ市長ってとこか。
まぁ、他にもまだまだ戻ってこられた方はいるが。」
ガイが指折り数える。
「ミュウがすっごい大変そうだったよねぇ。行ったりきたりで~。」
「まぁ、そのお陰で楽が出来ました。戦争も起こっていませんし、和平も近々結ばれる予定です。」
……なんかトントン調子?あれ?拍子?に進んでるんだな……。
「ですから、アッシュも我々に協力して下さっていますし、
貴方も家でゆっくりと寝こけて居られたわけです。」
嫌味ったらしい言い方は相変わらずで。
「降下作戦もアッシュに手伝ってもらっています。」
「ちっ……これから屑と一緒か……。」
お前も相変わらずだな……。
しかし……状況にただ一人ついていけなくてすっげぇ困ってるんだけど。
「でもさ、パッセージリングに行くとイオンとティアが……。」
「心配ありません。毒の中和は私が出来ますし、
扉を開くことが出来るのはイオン導師一人ではありませんしね。」
「へ?」
まぁ、ジェイドが中和出来るってのはなんとなくわかるけど……
その時、コンコンッとドアをノックする音がした。
扉を開けて入ってきたのはディストと……
「アニスー!!」
一目散にアニスに飛びついた……フローリアン……か?
「まったく、ここまで密かにつれてくるのは骨が折れましたよ。」
ディストが言葉とは裏腹に自慢げな様子を見せる。
「ご苦労様です。」
えっと……まってくれ……頭が……
「フローリアンみんな見てるからっ。」
恥ずかしそうに、困ったようにアニスが抱きつくフローリアンを宥める。
「あ、ごめんね。アニス?」
子犬みたいにシュンとするフローリアン。
「えっと……どういうことだ?」
「フローリアン導師もこちらへ戻ってきたってことよ。」
フローリアン導師……?
「前回の世界、と私たちは呼んでいますが、
そこでフローリアンは導師をアニスは元帥をなさっていたのですわ。」
あー…あぁ……。
「夫婦なんだよ!僕達!」
フローリアンがアニスを抱きしめつつイオンの方を見る。
イオンはにこやかに笑いながら「お似合いですよ。」なんて返した。
フローリアンにとってはイオンはライバルなんだな。
どうしたってアニスはイオンの面影を追っていただろうし……複雑な関係になんなきゃいいけどなぁ。
「まぁ、その話は置いておいて。
でだ、イオンとフローリアンが交互に扉を開いてくれれば、それぞれの負担も少ないだろ?」
「う…うん。」
「万全の態勢、ということです。」
「なんっつーか……。」
なんて言ったらいんだろう。
あんなに大変で、辛かった旅が……う~ん……?
俺の混乱をわかってか、ジェイドが言葉を継ぐ。
「これはやり直し、ですからね。
前もって起こることを知っているのですから、準備も整えられますし、万全は尽くして当然です。
変に悩まずにルークは己の出来ることをすればいいんです。」
「あぁ…そうだな……。考えたってしょうがないか。」
「そうそう、お馬鹿担当のルークが考えることじゃないって♪」
「お馬鹿担当ってなんだよ!アニス!」
きゃはは、と笑いながらアニスが小馬鹿にしたようにあっかんべーをする。
ムカつく~!
俺はアニスをとっ捕まえようと腕を伸ばしたけど、
するっと抜けて走り出し、おしりぺんぺんまでしやがった。
「てめぇー!このやろぉ!」
俺も走り出して、アニスを捕まえようとする。
「ルーク!病み上がりなのですから、走ってはっ!」
ジェイドの言葉が終わるのを待たずに、足がよろける。
倒れるっ!
そう思ったのに、衝撃はなく、俺はジェイドの腕にすっぽり収まってた。
「ルーク、一ヶ月も床に臥していたら体力が落ちていることぐらい容易に理解できるでしょう。」
溜息混じりのジェイド。それでも、優しく笑っている。
「ご…ごめん……。」
「アニスもアニスです。ルークは身体に変化を起こしているのは説明したでしょう。
記憶通りに動かそうとしても身体が付いていかないであろうことも。」
「ごめんなさい……。」
俺の時とは打って変わって、鳥肌が立つくらい怖い声を出したジェイドに、
アニスは体を硬くして謝った。
「だってぇ、なんか嬉しかったんですよぉ~。」
アニスの言葉に周りにいたみんなが頷く。
「そうね、ルークがここにいる。昔に戻ったみたいだもの。嬉しくなるのも仕方ないわ。」
「昔に戻ったみたい、ではなく、昔に戻ったのですわ。」
ふふっと笑ったナタリアに、「そうだったわね。」と言いながらティアも笑う。
みんなの笑顔が感慨深そうで、俺が消えてからどんな苦しみを味わったのか、思う。
「みんな、ご…ありがとな。」
ごめんと言おうとして止めた。
ごめんって言うくらいなら、ありがとうって言ったほうがいい。
それを俺に教えてくれたのはアリアだ。
「そんじゃ、ま。説明も終わったことだ、今日は一応解散ってことでいいだろ。」
アニスたちから不満の声が上がる。
「ルークは病み上がりなのです。
話したいことが沢山あるのは僕も同じですが、ゆっくり休ませて上げなくては。ね、皆さん。」
それぞれに、返事をし、俺にさよならを言って、みんなが屋敷を後にする。
残ったのは屋敷に住むガイと、俺の主治医をしていたらしいジェイドだ。
応接室でいつも父上が座る位置に俺、右にガイ、左にジェイドが座る形で、
紅茶を飲みながらゆっくりしてると、ジェイドがちょっと言い難そうにきり出した。
「ルーク、先ほど言い忘れましたが……。」
「うん?」
「ルークには屋敷に残って頂きます。」
「はぁ!?なんでだよ!」
一緒に行くものと思っていたからびっくりした。
思わず紅茶を噴き出したくらいだ。
「なんでもなにも、お前さんその体じゃ満足に出歩くことも出来ないだろ。」
その体ったって……
「たしかに薬飲んでなかったせいで体付きは変わっちまったけど!」
「そういう意味ではありません。さっきも言ったでしょう?
ずっと床に臥していたせいで今の貴方は筋力が殆どない状態なのです。
さっき転びかけたのだって走れると頭が記憶していたのに対し、
以前の記憶通りの筋力が備わっていなかった故に、体がついていかなかったせいです。」
ガイが無言で頷く。
「でも……だからって……」
「わかってくれ、ルーク。俺たちはお前が心配なんだよ。」
そっと、俺の手を握ろうと右手を伸ばしたガイ。
でもパシンッ!と痛そうな音を立てて、ガイが伸ばした手の甲をジェイドの左手が掴む。
その手を上に上げながら、
「そうです、万が一貴方に危
ガイが及ぶようなことがあれば、我々がどうなるかわかりますか?」
なんかガイの右手からボキって音が聞こえたような……
眉間に青筋を浮かべながらジェイドが俺ではなく、ガイを見ながらにっこりと笑う。
「あぁ、そうさ。お前を
敵から守るにはここにいて貰うのが一番なんだ。」
ガイも頬を引き攣らせ、脂汗を浮かべながらジェイドを見つつ笑ってる。
「ようするに……俺が役立たずってことか……?」
そう考えた俺に、二人が同時に違うと言った。
「そうじゃない!本当に心配なんだ!」
「でもそういうことだろ!?満足に動けないから要らないって……」
「ルーク。」
目を伏せて俯いた俺に、ジェイドの優しい声が降る。
「確かに貴方は満足に動けない。
アッシュが居るのでパッセージリングを操作する必要がない上に、戦闘に参加することが出来ない。」
うっわ……本当にただの役立たずじゃん……ジェイドの声が優しいから余計にへこむ。
本当に着いて行っちゃいけないんだって思って。
「貴方のすべき事は、体力の回復です。
その為には我々と行動を共にするよりも、屋敷で鍛錬したほうがずっと早い。」
たしかに、ジェイドの言うとおりだ。
「でも……役立たずだって、迷惑かけるってわかってるけど、一緒に……一緒に行きたいっ……」
ふぅ、とジェイドから溜息が漏れる。
呆れた…かな……。
「ルーク、顔を上げなさい。」
泣きそうなのを堪えて、言われた通りにする。
目線の先には、困ったように笑うジェイドの顔があった。
「わかりました。一緒に行きましょう。」
「本当か!?」
「えぇ。ガイが前衛で貴方を守ります。そうでしょう、ガイ?」
突然話を振られたガイが、「あ…あぁ。もちろんだ。」と言った。
「私が後衛で貴方を守りましょう。まずは満足に歩けるようになることが大切ですからね。」
「ん?それじゃあ俺はルークの傍には居れないってことじゃないか!くっそ…大佐にしてやられた……」
ガイが何かボソボソ言ってるけど、俺は嬉しくってそれどころじゃなかった。
「ありがとうジェイド!ガイも!」
「えぇ、どういたしまして。」
「あ…あぁ。頑張ろうな、ルーク。」
嬉しそうに笑うルーク。
今まで感じたことのない暖かさを得た。
この笑顔を見るために、私は多くを奪った。
微笑みの代償はあまりにも多かった。
それでも私は貴方を求めた。
そして手に入れた。
もう二度と離さない。貴方という存在を。
今までシリアス(ぎみ)路線だったのに、見事に消えたな。
これからは、ほのぼのと、あまあまを盛り込んだお話だらけになるでしょう。
そして、本編の内容はすっ飛ばしながら書くんだろうな私……
ルーク至上主義で突き進ませていただきます!
ちなみにルークが悩んでいたことに明確に答えます。
ジ「ご都合主義ってやつですねw」
管「はいwご都合主義ってやつですw」
ル「なんだそりゃー!」

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