ありがとう ありがとう
酷いことしたのに 笑顔でいてくれてありがとう
俺の考えた名前 受け取ってくれてありがとう
俺 頑張るから、お前みてるはずだもんな
だから ありがとう
「ん…んぅ……。」
目覚めれば自室で、誰もいなかった。
ミュウすら居ないわけ?
俺としては感動の再会が待ってるもんだと思ってたんだけど……。
背伸びをして、ベッドから降りようとした時ドアが開いた。
「ルー…ク…。」
驚いた顔のジェイドが手に持ってた何かを落とす。
パリンと音がしたからにはガラス系だったんだろうけど、なんだろう。
「ジェイド、ただいま。」
そう、言えば駆け寄ってきたジェイドに思いっきり抱きしめられて。
「ジェイド…痛いって。」
「少しの間我慢しなさい。」
って、命令かよ。苦笑いが漏れる。
俺の苦笑いが気に食わなかったのか、これ以上無いってくらい強く抱きしめられた。
「どれだけ…どれだけ私が貴方を……。」
「……分かってる、知ってる。」
俺もジェイドを抱きしめる。
二人とも無言のまま、どのくらいそうしてたんだろう。
ジェイドが腕を放した。
「ジェイドが泣いてんの見るの二回目だな。」
前と同じように涙を拭う。
されるがままなジェイドが可愛いって感じて、ちょっと照れくさかった。
「貴方ぐらいですよ、私を泣かせるのは。」
「はははっ、てことは俺最強だな。」
「全く……その通りで困ります。」
やばい、どうしよう。
俺、今すっげぇ幸せなんだけど。
ありがとう、ジェイド。
ありがとう、アリア……
アリアの伝言伝えなくちゃな。
「ジェイドに伝言。優しくしてくれて、ありがとうってさ。」
ジェイドが「は?」と返して来る。
「俺だった…あいつから。
ほんとはガイにも伝えて欲しいって言ってたけど、全部終わってからって約束だからなぁ……」
ありがとうなどと、言ってもらう資格はないというのに。
私の傲慢で、彼の人生を急に終わらせてしまったというのに。
「多分本当に、心からそう思ってたんだと思う。だって嬉しそうに笑ってたもんな。」
「そう…ですか……。」
ジェイドが沈む。
「俺さ!あいつの名付け親になったんだ!名前くれっていうから、アリアっ…て……。」
今さら、涙が込み上げてくる。
ジェイドが、優しく抱きしめてくれた。
「アリア…いい名前だと思いますよ。」
彼はまるで歌うように笑った。
ルークであると思い込んでいたことを差し引いても、私は彼を好いていた。
今さら気付く。私も毎回の事ながら気付くのが遅くて困る。
「おれ、あいつに悪いことしたなぁ……。でも、ごめんて言ったら怒られた。」
「貴方の悪い癖ですね、すぐに謝るのは。」
「あははっ、やめた方がいいって言われたな。」
悲しそうに、けれども笑顔でルークは笑う。
無言が続いた。
不意にジェイドが「あぁ。」なんて間の抜けた声をだした。
「忘れていました、明日魔界へ向かいます。」
「んん?ってーっと……。」
「シュレーの丘のパッセージリングを操作しに行くんですよ。」
え?
「俺…どんぐらい寝てた…?」
「一ヶ月ほど。」
「でぇぇえええ!?」
「本当に心配しましたよ。このまま目覚めないんじゃないか、と。」
「ご…ごめん……。」
また、謝っちまったけど、この場合はこれでいんだよな?
ジェイドがふぅって溜息をつく。
だめだ、言いたいこといっぱいあったはずなのに、言葉が出てこない。
それはきっとジェイドも一緒で、二人とも無言のままベッドに座っていた。
だけど考えてみれば俺、ジェイドに好きって言ってないんだよな?
そっか、そうなんだよな。
うん、言うか。
「なぁジェイド。」
俺の隣に腰掛けたジェイドの顔を見る。
「なんですか?」
「俺、お前のことが好きだ。あぃ…愛してるって意味で好きだ!」
途中からすごく恥ずかしくなって、声を張り上げた。
「っ……。」
ジェイドが鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してる。
すっげー貴重なもん見たって思ったらいきなり押し倒されて、またギューって抱きしめられた。
「……私を殺す気ですか?」
「はぁ?なんでだよっ!」
なんかすっごい恥ずかしくて、ぶっきらぼうになる。
「心臓が止まるかと思いました。」
ジェイドがガバッと起き上がり、真剣な顔をした。
「私も、貴方を愛しています。心の底から、貴方だけを求め続けた……。」
「う…うん……。」
自分でも顔が真っ赤になってるのがわかる。わかるんだけど目を離せなくて。
「しかし、そそりますね。」
マジメな顔してたと思ったら急に妖しく眼を細める。
「なっ!何が!?」
「いいから、黙って……。」
降りてくる顔に、ぎゅっと目をつむる。
柔らかく、触れるだけのキス。
「そんなに強く唇を結ばれると、舌が入れられません。」
「ばっ!おまっ…んっ…ふぅ……」
なに言ってんだよ!って言おうとしたのに、ふさがれた唇。
貪るように溶かす様にうごめく舌。
「んぅ……うっ…ふぁっ」
息が出来ずにジェイドの背中をバシバシ叩くとやっと唇が離れた。
「いきなりなにすんだっつうの!」
「おや、お子様には刺激が強すぎましたか?」
「ばっ!子供じゃねーって!」
そういうと、急にジェイドが声を上げて笑い出した。
なんか、今日は珍しいもんいっぱい見てる気がする。
「笑ってんじゃぬぇ!」
「くくっ、いえ、なんでか…ルークがここにいるんだと思ったら……。」
「なんで俺がいると笑うんだっつうの……。」
ゆっくりと起き上がる。くそっまだ笑ってやがる。
「ふぅ……ともかく、お帰りなさいルーク。」
「あ…あぁ、ただいま。」
ありがとう
幸せな時間をくれて
ありがとう
そばにいてくれて
言い尽くせない程の想いを果す為に
俺 精一杯生き抜いてみせるよ
優しい日差しに包まれながら 誓った
あっま…あっっっっっま………
書いてて途中で何度も手が止まりました。
砂糖吐きかけて。
これにて一幕が終了となります。
ここまでお付き合いくださった方に最大級の感謝を。

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